開発者がapiなどのドキュメント作成で直面する課題

Challenges Developers Face in Creating API and Code Documentationの意訳です

ほとんどの開発者は、ドキュメントよりもコードの作成を優先します。ドキュメント作成が特に難しいわけではありませんが、納期に追われる環境では後回しにされがちです。まるで、金曜の午後になってようやく本番環境のバグを修正したり、テストされていないコードを整理したりするようなものです。

しかし、なぜドキュメント作成は常に開発の優先順位を下げられてしまうのでしょうか?

このブログでは、ドキュメント作成が軽視される背景にある心理的な偏りや技術的な障害、組織的なプレッシャーについて掘り下げます。また、ソフトウェア開発プロジェクトにおける不十分なドキュメントの影響を考察し、ドキュメント不足の状況を改善するための具体的な戦略について議論します。

ドキュメントの種類とカテゴリーについて

  • 内部ドキュメント:コードベースに直接関わる開発者、テスター、その他プロジェクトの細部に携わる人々のためのドキュメントです。ベストプラクティスや技術的な指示、限られた人しか理解する必要のない複雑なアルゴリズムの解説など、プロジェクトの内部運用に欠かせない指針を提供します。いわば、秘伝のレシピのようなものです。

  • 外部向けドキュメント:開発したソフトウェアを使用するユーザーや顧客、またはソフトウェアと統合する開発者向けの資料です。APIリファレンスやユーザーマニュアル、プロジェクトの採用を左右する重要なWikiなどがこれに含まれます。

このブログでは、特に他の開発者がコードベースのデバッグや学習に活用できる内部開発者向けドキュメントに焦点を当てます。

アジャイルの現実:「後でドキュメントを作成する」

2週間のスプリントと毎日のデプロイが当たり前の現代では、ドキュメントは真っ先に犠牲になることが多いものです。私たちは皆、一度はこうした状況に陥ったことがあるでしょう。スプリントが終了し、PRをマージし、機能のリリースを急ぐプレッシャーに追われる。「次のスプリントでAPIドキュメントを追加しよう」と自分に言い聞かせつつ、心の奥では「次のスプリント」が来ないかもしれないと気づいている——そんな経験はないでしょうか?

アジャイル開発の現実は、これをさらに悪化させます。APIドキュメントの更新とバックログの次のストーリーへの対応、どちらを優先するかと問われれば、どちらが選ばれるでしょうか?ストーリーポイントや速度の測定基準では、ドキュメント作業はほとんど考慮されません。これは技術的負債と似ていますが、目立たない分、見過ごされがちです。しかし、いずれ影響が表れないわけではありません。

もし、スプリントごとにドキュメントをしっかり更新している開発チームがあれば、ぜひ教えてください。

以下に、よくある状況を紹介します。

// スプリント1:初期実装
async function processOrder(orderId) {
  // TODO: API ドキュメントを追加...
}

// スプリント 3: 新しいパラメータを追加
async function processOrder(orderId, options) {
  // TODO: API ドキュメントを更新...
}

// スプリント 5: 仕様変更
async function processOrder(orderId, options, callback) {
  // TODO: 本当にドキュメントを更新する必要がある......
}

「後でドキュメント化する」という考え方は、深刻な結果を招くことがあります。TODOコメントがそのまま放置され、API仕様は曖昧なまま。そして半年後、チームは会議室にこもり、なぜ支払いサービスが注文サービスの想定していないコールバックを送信しているのかを解明するために何時間も費やすことになるのです。

これまでにIDEで CTRL+F を使って「TODO」を検索したことがありますか?
もし検索結果が10件未満だったなら、あなたは優秀なエンジニアリングチームの一員です。(もちろん、チームがTODOコメントを付けていることが前提ですが)

開発者がコードをドキュメント化しない理由とは?

ソフトウェア開発における一般的な誤解のひとつに、「コードがきれいで読みやすければドキュメントは不要だ」という考え方があります。確かに、関数シグネチャや変数名が適切であれば理解しやすくなりますが、それだけでは特定の決定がなされた理由を完全に説明することはできません。

「明白だ」という症候群

「明白だ。関数名がすべてを物語っている!」

どんなにきれいなコードでも、すべてを語ることはできません。適切な変数名や明確な関数は確かに役立ちますが、なぜそのアプローチを選んだのか、どのようなエッジケースを考慮したのか、将来の保守担当者が注意すべき点は何かといった背景情報までは伝えられません。
きれいなコードは「どのように動作するか」は示せても、「なぜそうなっているのか」は示せない。そこを補完するのがドキュメントの役割です。

動く的の問題

現代の開発は高速で進んでいます。

コードベースが常に進化していると想像してみてください。新しい機能が追加され、APIが変更され、コードがリファクタリングされる。その間に、ドキュメントは古くなっていきます。先月は正確だった内容が、今日では誤解を招く可能性があり、来期には完全に間違っているかもしれません。

ドキュメントの陳腐化は自然に起こります。開発者は日々、高速でコードを変更しており、その影響でドキュメントの一部分が時代遅れになってしまうことは珍しくありません。APIエンドポイントの変更だけでなく、クラスメソッドの更新、関数シグネチャの進化、データベーススキーマの変更など、さまざまな要因が絡み合います。気がつけば、かつて正確だったドキュメントが、時代遅れの情報の地雷原と化してしまうのです。

例えば、こんな状況が起こります。

  • ドキュメント化したAPIエンドポイントに、新たに3つの必須パラメータが追加されている

  • エラーコードのセクションが6か月間更新されていない

  • 例として掲載したコードスニペットが、もはやコンパイルさえできない

  • 認証フローが完全に変更されたのに、ドキュメントには古い手順がそのまま載っている

これこそが、コードとドキュメントを同期させることが難しい理由です。ドキュメント作成は一度きりの作業ではなく、常に変化と戦い続ける必要があるのです。

コードがドキュメントとずれても、必ずしも動作しなくなるわけではありません。しかし、ユニットテストはコードが正しく動作するために常に最新の状態に保たれる必要があります。適切に書かれたテストは、単なる機能の検証を超え、具体的な例を通じて適切なAPIの使用方法を示す役割も果たします。

網羅率の測定にこだわるだけではなく、意味のあるテストケースを作成することで、開発者はコードがどのように動作すべきかの正確な参照を提供できます。テストは唯一のドキュメント形式であるべきではありませんが、信頼性が高く、自動的に更新される例を示すことで、書かれたドキュメントを補完する強力なツールとなります。

心理的要因(私たちも複雑な生き物であるため)

正直に言いましょう。ドキュメント作成の問題は、単なる時間的な制約だけではありません。優れたドキュメントを作成することには、コーディングにはない難しさが伴います。

まず、異なる思考方法が求められます。コーディングでは、コンピュータと正確かつ論理的な用語で対話します。しかし、ドキュメント作成ではどうでしょうか?
人間とコミュニケーションを取り、質問を予測し、複雑な概念を明確に説明しなければなりません。多くの開発者にとって、この思考の切り替えは簡単ではありません。

また、完璧主義の罠 もあります。
「このドキュメントは本当に十分な品質だろうか?」
「間違った説明をしていないか?」
「重要な詳細を見落としていないか?」
こうした不安が先延ばしにつながります。結局のところ、「間違ったドキュメントを作るくらいなら、いっそ書かない方がいい」と考えてしまうかもしれません。(ネタバレ:そうではありません)

さらに、動機付けの問題 もあります。
コードを書いて、それが動作すれば、すぐに達成感が得られます。しかし、ドキュメントには即座の報酬がありません。その価値が明らかになるのは、数週間、あるいは数ヵ月後、誰かが(将来の自分も含めて)仕組みを理解しようとしたときです。

ドキュメント作成が負担に感じられるのは、不慣れなスキル、不完全さへの不安、そして報酬の遅延が重なるためなのです。

質の悪いドキュメントがもたらす影響

質の悪いドキュメントの影響は、個々の開発者にとどまらず、プロジェクト全体に広がります。

  • 生産性の低下とコードのメンテナンス負担の増加
    開発者はコードの理解に多くの時間を費やし、その結果、作業の遅延が発生します。

  • バグやエラーの増加
    コードの意図が正しく伝わらないことで、誤解によるバグやエラーが発生しやすくなります。

  • 共同作業の障害
    不十分なドキュメントは、開発者同士のスムーズな協力を妨げ、無駄なやりとりが増える原因になります。

  • 知識の損失
    チームメンバーが退職すると、ドキュメント化されていない知識も一緒に失われ、引き継ぎが困難になります。

実際に効果のあったこと

当社で実際に効果を発揮した方法を、優先順位の高い順に紹介します。

意味のあるコメントを活用する

完全なドキュメントを作成する時間がない場合、まずはコメントから始めましょう。コードの「何をしているか」だけでなく、「なぜこの実装なのか」を説明するコメントを残すことが重要です。将来の自分、あるいはあなたが退職した後にコードを保守する開発者への、小さなラブレターのようなものと考えてください。

簡潔かつ最新の状態に保つ

誰も冗長な文章を読むのは好きではありません。ドキュメント(コメントを含む)は簡潔で要点を押さえ、焦点を絞ったものにしましょう。そして、最も大切なのは最新の状態を維持することです。古くなったドキュメントは、むしろ無い方がマシな場合すらあります。それは、もはや存在しない都市の地図を渡すようなもので、フラストレーションを生むだけです。

AI開発ドキュメントツールの導入

最新のAIツールを活用することで、PythonのDocstring、JavaScriptのJSDoc、JavaのJavadocなどのコードドキュメントを自動生成・メンテナンスできます。これらのツールは、コードの構造を解析し、パラメータ、戻り値の型、関数の目的を説明するドキュメントを提案できます。完璧な代替にはなりませんが、開発のスピードを上げ、リファレンスドキュメントの最新性を保つのに大いに役立ちます。

READMEの活用

プライベートリポジトリのREADMEは、後回しにされがちです。しかし、オープンソースプロジェクトと同様にREADMEを充実させることで、オンボーディングにかかる時間を大幅に短縮できます。プロジェクトの目的、開発フロー、APIドキュメント、実行手順、アーキテクチャ図など、重要な情報をまとめましょう。新しくチームに加わったメンバーが最初の1週間で聞きそうな質問を想像して、それをREADMEに記載すると効果的です。

視覚的な補助を使用する

開発者向けドキュメントをすべて文章で書くのが難しい場合は、アーキテクチャ図やシーケンス図を活用しましょう。特に複雑な概念を説明する際には、1枚の図が1000の言葉に値します。フローチャートや図解を取り入れることで、ドキュメントをより直感的で分かりやすくすることができます。

結局のところ、優れたドキュメント文化を根付かせることが鍵です。まずはPRチェックリストにドキュメント更新を含めることから始めましょう。コードレビュー時にドキュメントについて議論し、適切なコメントやガイドを追加したメンバーを評価する仕組みを作るのも有効です。こうした取り組みを続けることで、「後でドキュメントを作成する」から**「ドキュメントがなければ完了ではない」**という意識へと、チーム全体の認識が変わっていくはずです。

まとめ

優れたドキュメントとは、完璧なものではなく、今日のソリューションと明日の問題をつなぐ橋です。ドキュメント作成の課題を完全に排除することはできませんが、小さな一貫したステップとチーム文化の変革によって、ドキュメント作成をより管理しやすくすることは可能です。

  • まず「なぜ」を説明する有意義なコメントを記載することから始める

  • ドキュメントの更新をPRプロセスの一部に組み込む

  • 社内プロジェクトでもREADMEを効果的に活用する

  • テキストだけで伝わらない場合は、視覚的な補助手段を取り入れる

  • 時代遅れのドキュメントは、ドキュメントがない状態よりも悪いことを意識する

次にドキュメント作成を後回しにしたくなったときは、思い出してください。ドキュメントは他の人のためだけでなく、未来の自分のために書いているのだということを。

なぜなら、6か月後には、私たちは皆、自分のコードのことをまったく覚えていないのですから。

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Atsushi Nakatsugawa
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