効果的なコードレビューの実施方法


How to Do Thoughtful Code Reviewsの意訳です。
効果的なコードレビューには、丁寧で明確なコミュニケーションが不可欠です。チームが拡大するにつれ、これは大きな課題となります。各開発者が、それぞれコードを作成するためです。そのため、適切にドキュメント化されたコードレビューのガイドライン、プロセス、原則が非常に重要です。
コードレビューは、ソフトウェア開発ライフサイクルにおける重要なステップです。省略すべきものではありません。ただし、その実施方法については長年にわたり議論が続いています。
組織ごとにコードレビューの取り組み方は異なります。
すべてのメンバーがコードをレビューする組織もあれば、レビューを1人のチームメンバー(通常は著者より経験豊富なエンジニア)に任せる組織もあります。
大手テクノロジー企業では、コードレビュー全体のプロセスを管理するための社内ツールを導入しています。たとえば、GoogleはCritiqueやGerritを、MetaはPhabricatorを活用しています。さらに、ジェネレーティブAIやAIコードアシスタントの普及により、これらを取り入れてコードレビューを自動化する動きも広がっています。
組織ごとにコードレビューの進め方が異なるように、ソフトウェアエンジニア自身も、コードレビューのやり方についてさまざまな意見を持っています。ただし、これらの意見は、実際の職場環境とは一致しないこともあります。つまり、エンジニアが理想とするコードレビューのあり方(コードレビュー)と、職場で実際に求められている方法との間にギャップが存在するのです。
私たちは、X上でエンジニアが語ったコードレビューに関する意見をいくつか発見しました。それらは一見の価値があります。
これらのエンジニアは皆、それぞれの意見に対して正当な理由を持っています。中には、自身の実体験に基づいて意見を述べている人もいます。
私たちは、こうした多様なコードレビューに関する意見を踏まえ、以下のように分類しました。
「コードレビューが好き」グループは、レビューを通じての改善を望む人たちです。無条件にレビューを求め、職場で決められたプロセスに素直に従います。
「コードレビューは好きだけど」グループは、レビューそのものには肯定的ですが、いくつかの条件を必要とします。たとえば「コードレビューは好きだけど、あなたのコードスタイルを強制しないで」や「コードレビューは好きだけど、AIエージェントで自動化すべき」といった意見が挙がります。
「コードレビューは必要ないと思う」グループ(ややマイナーな立場)は、レビューを他人の基準に合わせるだけのものと捉え、価値を見出していない場合があります。
いずれのグループにも、それぞれ納得のいく理由があります。この投稿では、そうした背景を踏まえつつ、より良いコードレビューのためのヒントを共有していきます。まずは、「責任追及型の文化」に関する話題から始めましょう。
コードレビューの責任追及文化
コードレビューは、作者とレビュアーの間で何度もやり取りが発生する、手間のかかるプロセスであることはよく知られています。もし適切に運用されていなければ、コードの欠陥を見つけ出すことが主目的となり、レビュー中にバグが見逃された場合には、誰に責任があるのかを問う雰囲気が生まれてしまいます。私たちはこうした状況を「責任追及文化」と呼んでいます。
コードレビューは、コードの品質や一貫性、そしてベストプラクティスの実践を確保することが目的です。
コードレビューを対立の場として捉えるべきではありません。同様に、レビュアーのフィードバックも、個人ではなく課題そのものにフォーカスする必要があります。もしチーム内で、個人攻撃、過度な揚げ足取り、防御的な態度といった行動が見られるようになると、やがて責任追及の文化が根付いてしまいます。
コードレビューでバグが見逃されたとしても、最初に考えるべきは「誰の責任か?」ではなく、「何がうまくいかなかったのか?どう改善すべきか?」です。この考え方こそが、健全なチームマインドセットです。
責任追及の文化は有害であり、コードレビューに持ち込むべきではありません。
この点をしっかりと認識したうえで、次にコードレビューを適切に実施するための方法について解説していきます。
適切なコードレビューの実施方法
コードレビューに万能なアプローチはありません。しかし、チームは透明性のあるプロセスと明確な基準のもとで取り組むべきです。思慮深いコードレビューは、単なるエラー発見にとどまらず、知識の共有やチームとしての協業、そして共感の醸成を目的とします。
以下に、思慮深いコードレビューを行うために重要だと考えるポイントを挙げます:
事前自己レビューを実施(自分の仕事に責任を持つ)
まずは、自分のコードを自分自身でレビューしましょう。Create Pull Request を押す前に、コードを見直す習慣を持つことが大切です。これは、自分の力を疑うということではなく、「人は誰でもミスをする」という前提に立った行動です。それ以上に大切なのは、レビュアーの時間と労力を大切にする姿勢を示すことです。
コードやテストにエラーやバグがないかをしっかり確認してから、ピアレビューに提出しましょう。
自己レビューの際は、高リスクと低リスクの変更に意識を向けることが重要です。
高リスクの変更 — 重要なビジネスロジック、セキュリティ、パフォーマンスに影響を及ぼすような変更は、特に慎重にチェックする必要があります。
低リスクの変更 — たとえば、小規模なリファクタリングやドキュメントの修正などは、簡潔なレビューでも問題ありません。
レビューに優先順位を設けることで、深刻な問題を早期に発見しやすくなり、全体のプロセスも効率よく進めることができます。
小さなPR
大規模な変更を含むコードを徹底的にレビューするのは非常に困難、というよりほぼ不可能です。
1,000行を超えるコードを一度にレビューしたい人はまずいません。単に疲れるだけでなく、見落としが増え、フィードバックも遅れがちになります。こうした問題を避けるためにも、大きな変更は小さく論理的に分けたPRに分割しましょう。これにより、開発のスピードも向上します。
GoogleやFacebookのような大手企業、あるいは成熟したエンジニアリングチームでは、「小さなコミット」の文化が根付いており、それによって「マージ地獄」を防いでいます。
目安: レビューに10〜15分以上かかるPRは、大きすぎる可能性があります。
共感を持って書く/レビューする
コードを書くときも、レビューをするときも、相手の気持ちを想像することが大切です。ベストプラクティスに従い、読みやすく整ったコードを書くことは、自分のあとにコードを読む人への思いやりの表れです。共感とは、相手の立場になって考える姿勢です。
たとえば、「この関数は少し珍しいと思います。もう一度確認していただけますか?」という表現は、「この関数は悪いです。リライトすべきです」といった言い方よりも、はるかに共感的です。
PRへのコメントは、個人的な感情に基づいたり、あいまいな内容になったりしてはいけません。
❌ ヌル値のチェックをしていません。
✅ この入力値はヌルになる可能性があります。サーバーエラーにつながるおそれがあるため、ヌルの場合はクライアントエラーを返すようにしてください。
2つ目のポイント: ・コードにフォーカスし、人を責めないこと。・改善提案は具体的かつ明確にすること
良いコードレビューの目的は、単にバグを見つけることではありません。チーム全体がより良いコードを書くための支援をすることです。もしフィードバックが攻撃的に聞こえてしまうと、誰も耳を傾けようとしなくなります。
コードレビュープロセスを自動化しましょう
繰り返し同じ作業をするのが好きな人はいません。退屈で、すぐにイライラしてしまいます。実際、コードレビューのサイクルはそうなりやすいものです。だからこそ、繰り返し発生する手動作業は、可能な限り抽象化・排除すべきです。
自動化ツールを活用すれば、ワークフローの効率化が可能です。特にリンターのようなツールは、コードレビューの一部を自動で処理するのに非常に効果的です。
AIコードエージェントを活用すれば、コードレビューの一部を自動化することが可能です。
もちろん、人間によるレビューは今後もしばらくは不可欠です。ただし、リンターやフォーマッターが、チームで合意されたベストプラクティスの遵守に役立ってきたように、AIベースのコードレビュー自動化ツールもまた、AIによる高度なリンティングを通じて、ノイズを減らし、影響の大きな問題に注目を集める手助けをしてくれます。
注意:AIベースのツールにはハルシネーションのリスクがあります。期待する出力を得るには、LLMに対してレビューの方針や基準を細かく指示・調整する必要がある場合があります。
チームで標準を合意する
私たちは皆、人間としてそれぞれ異なる偏見や好みを持っています。物事の進め方に対する「自分なりのやり方」があるのは自然なことです。ですが、その個人的な好みや偏見を他のメンバーに押し付けるべきではありません。
自分のコードスタイルを他人に押しつけるのはやめましょう。
パス閾値を設定する
コードの承認は、「レビュアーの気分次第」であってはなりません。チームとして、明確なパス閾値(合格基準)を定めることが必要です。
これは、メインのコードベースにマージするために提出されたコードが満たすべき最低限の基準を意味します。
パス閾値として設定できる基準には、パフォーマンスベンチマーク、セキュリティ要件、読みやすさなどがあります。
GitHub Checksは、合格閾値の自動化とその強制をサポートしてくれる仕組みです。プルリクエストがマージされる前に、特定のチェック項目をクリアするよう設定することで、コード品質の一貫性を保ちながら、コードレビューのスピードアップにもつながります。
クリアなフィードバック
フィードバックは、具体的で行動につながる内容を心がけましょう。文脈が不明確な場合は仮定せず、質問を通じて確認してください。良いコードレビューとは、単なる批判ではなく、コラボレーションなのです。
疑問があれば、あいまいにせず、具体的かつ実行可能な形で伝えるようにしましょう。
悪い例: これは間違っています。修正してください。
良い例: このアプローチにはレース条件が発生する可能性があります。ここにロックを使用する方が良いでしょうか?
すべての問題に対して自分で解決策を出す必要はありません。大切なのは、著者が気づきを得て、より良いコードに改善できるようサポートすることです。
まとめ
コードレビューは、時間と労力を要するプロセスです。
だからこそ、慎重かつ丁寧に取り組むことで、関わる全員の負担を軽くすることができます。うまく実施すれば、チーム全体のコード品質の向上や一貫性の確保に加え、協力し合える文化、オープンな対話、そして学びのある環境を育むことにもつながります。
あなたのチームでは、どのようにコードレビューを行っていますか?また、今後どのように進めていきたいと考えていますか?
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